はじめに

 

平成11年(1999年)6月に施行された男女共同参画社会基本法において、21世紀の最重要課題として位置づけられた男女共同参画社会の実現は、「人権の世紀」と呼ばれる21世紀のもっとも中核的なテーマである。21世紀の最重要課題としての男女共同参画社会の目標は、前世紀における単なる女性の地位向上といったものではなく、男女両性を対象とした性別による偏りのない<21世紀型>社会システムの構築である。名古屋大学は大学組織の男女共同参画を推進することはもちろんのこと、高等教育研究機関として、この実現に寄与する社会的使命を持つものと考える。

 

名古屋大学は、平成11年(1999年)6月に男女共同参画社会基本法が制定・施行されたことを受け、平成12年(2000年)9月に「男女共同参画に関する検討委員会」を設置し(平成13年(2001年)3月「男女共同参画推進委員会」に改組)、さらに、平成12年(2000年)10月に「男女共同参画に関するワーキンググループ」を設置した(平成13年(2001年)3月に「男女共同参画推進に関するワーキンググループ」として設置)。

 

このワーキンググループの活動に基づき、全国の国立大学に先駆け、平成13年(2001年)3月「名古屋大学における男女共同参画を推進するための提言」を評議会で決定し、さらに平成14年(2002年)3月には「名古屋大学における男女共同参画を推進するための提言―男女共同参画に関する具体的推進方策について―」を決定した。名古屋大学の提言及び具体的推進方策は、インターネット上で公開することにより、他大学の推進策に影響を与えるとともに、高い評価を受けている。

 

また、平成14年(2002年)9月には、文部科学省生涯学習局主任社会教育官名取はにわ氏、内閣府男女共同参画会議影響調査専門調査会会長大澤真理氏(東京大学大学院教授)を招き、「男女共同参画推進をめぐる日本の現状と課題、名大の現状と課題」をテーマとして、男女共同参画シンポジウムを開催し、官学連携の基礎的枠組みを作るとともに、名古屋大学の男女共同参画推進方針を学内外に示し、さらに平成15年(2003年)1月には男女共同参画推進業務を積極的に進めるための「男女共同参画室」を設置した。国立大学における低水準の女性教官比率に代表される、男女共同参画の視点からの男女間の格差に対する批判は強く、これに対して国大協が平成22年(2010年)女性教官比率20%の目標を提言したことは周知の通りである。名古屋大学の女性教官比率は7.4%(平成14年(2002年)8月現在、助手を除く)であり、20%の目標を達成するためには積極的な方策を必要としていることは明らかである。すでにワーキンググループでは、ポジティブ・アクションとして、女性教官比率に関する目標設定、育児・介護支援に関するアンケートの実施などの活動を進めつつあるが、さらに、具体的推進方策を積極的に実施することが必要である。また、ジェンダー差別・格差の是正及び監視のための苦情処理制度の設置が検討されるべきである。ところで、これらの男女共同参画社会の実現は、大学のみで達成できるわけではなく、産業界、政策的視点からの中央省庁、あるいは地域行政としての地方官庁との連携が不可欠である。また、人材を育成し、供給する側の名古屋大学と、受け入れる側の企業・自治体との双方が、共に男女共同参画の実現をめざすという、相互関係の構築が必要である。

 

名古屋大学はこの地域の基幹大学としてリーダーシップを発揮し、産・学・官の連携フォーラムを組織し、シンポジウム、セミナー等を開催することにより、知見の提供、施策展開に関する情報交換等を行う。産・学・官の連携において大学に期待されることとしては、男女共同参画社会実現のための理論的枠組みの提供があげられる。また、これらの基礎的知見を実社会に還元する際には、政策分野、あるいは産業分野における実質的な施策展開がなければならず、男女共同参画社会推進のための政策的見地からの知見の提供が必要である。名古屋大学は産・学・官の連携を実現し、これらの期待に応える。男女両性を対象とした性別による偏りのない<21世紀型>社会システムとしての男女共同参画社会の実現は、名古屋大学においても、学生を含む全構成員の大学における活動の活性化のため、あるいは対社会的責任として重要な施策であると考える。そこで、名古屋大学は<21世紀型>男女共同参画社会実現のため、平成22年(2010年)3月までの7年間を重点期間として位置づけ、さまざまなポジティブ・アクションをとることにより、男女共同参画の視点からの男女間の格差の是正を通じ、両性の共同参画の実現を目指す。

 

平成15年3月

名古屋大学男女共同参画推進に関するワーキンググループ