第1節  育児支援アンケート結果報告    

調査の趣旨:

 本学の男女共同参画推進の一貫として、子どもを抱えながら就学・就業する上でどのような問題が生ずるのか、それを支援する方策としてどのような援助が望まれているのかを全学の教職員・学生を対象に調査する。この結果をふまえ、大学として可能な支援のあり方を提案する。

回答者:969名(回収率22.0%

学生・職員・教官ほぼ同数、男女・未婚/既婚の割合もほぼ同率

結果の概要:

1)子どもをもっている約400名の回答者のうち、半数以上が育児と就学・就業の両立に困難を感じている。その理由は、「子どもの病気のとき、休みたくとも休めず子どもを1人で寝かしておいた」等子どもの病気に関するものが最も多く、「常に時間に追われ、保育園の送迎時間に拘束されている」という時間的制約が次いで多かった。400名中268名から大学からの支援を望み、その主な支援策は「学内に保育施設を」と「休暇がとりやすいような環境、周囲の理解がほしい」であった。

2)現在就学前の子どもをもっている約130名の回答者に現状と要望を聞いた。その半数以上が保育園などに昼間子どもを預けており、家族が面倒をみたり幼稚園に行かせている家庭は3分の1以下であった。もし東山地区に保育所ができたら「利用する」が24名、保育の質などの「条件付きで利用する」が26名、計50名であった。

現在、夜間保育を利用している者19名、祖父母19名、ベビーシッターなど9名と、夜間の保育にも要望が強く、東山の夜間保育ができたら「利用する」「条件により利用する」を選択したものは46名であった。

3)小学校低学年の子どもをもつ53名の回答者のうち、現在学童保育所等放課後保育施設に通わせているものは22名で、やはり東山の夜間保育ができたら「利用する」「条件により利用する」を選択したものは12名であった。「利用しない」と答えたのは、小学校の場所が大学から遠いため連れてこられないと答えた者が多かった。

4)回答者全員を対象に聞いた要望としては、6割が産休明けから3歳児未満の昼間保育所の設置を求める声が多く、ついで就学前までの保育所、未就学児の夜間・必要時の一時保育が続く。自由記述欄にも産休明けから次年度の4月の保育園に入れるまでの時期が問題だとする意見が多く寄せられた。また、病後児(体調が十分でない時期)の保育を求める切実な声が多く、そのために「看護師を常勤又は非常勤でおく」や「大学の医療関係機関との連携」を多くの人が望んでいる。

 費用は鶴舞地区の「あすなろ保育所」並みの45千円程度であれば、高いが仕方がないとする意見が最も多かった。

5)学内の保育施設の設置以外では、就学・就業と育児の両立のために必要な制度として、休業制度の充実・経済的支援・残業の廃止や就学・就業時間の短縮を望む声が多かった。しかし、一方で制度として休業が認められたとしても、周囲の様子からなかなか休暇をとれない状況が存在しており、勤務形態の柔軟化をはかる上で、人の増員や仕事量の軽減が重要だとする意見が多く寄せられた。

6)意見の数としては必ずしも多くはないが、「育児上の悩みを相談できるカウンセリング窓口がほしい(19件)」や授乳できる場所など「大学の施設を改善してほしい(14件)」、「ベビーシッターなどを斡旋してほしい(10件)」「送迎に必要なので車の学内乗り入れを許可してほしい(3件)」など、大学として支援可能なものもあった。

結論(提案):

1)子どもを育てながら就学・就業することは、人間生活のごくあたりまえのことであり、そのことが、男性にしろ女性にしろ社会参加の足枷になってはならない。このごく当たり前のことを堂々と行えるような環境作りがまず第1歩である。周囲は育児に伴う諸々の事情を理解し、必要に応じて支援していくような雰囲気を学内に作り上げていく必要がある。講演会やシンポジウムのほか、各部局でふだんからきめの細かい対応策を考えていくことが重要であろう。

2)最も要望の多かった「産休明けから3歳未満児」保育は、公立・認可保育園でもなかなか対応してもらえないことから、大学が最優先に対処していく必要がある。したがって、昼間(8:0018:00)の3歳未満児を対象とする保育施設を東山キャンパス内に開設することを提案する。その場合、施設や人材の配置には、安全面・健康面には特に十分な配慮がなされる必要がある。

3)病後児保育のための対策をたてる。子どもが病気になったときは、もちろん親が休める制度を充実させることが最も重要であるが、病気の回復時などまだ体調が十全でない場合でも、医療関係者と連絡をとりながら、就学・就業が安心して続けられるような対応策をとる必要がある。これは、1)の安全面・健康面の配慮に関わる問題でもある。

4)保育施設には、1歳から就学前および小学生までを対象とした夜間保育施設を併設する。これは、常時預かりのほか、臨時的な一時預かりも扱う。夜間開講の授業出席や夜間にかかる会議・残業など定期・不定期の必要性に対処することと同時に、ふだんは家族が世話をしている場合であっても、家族の用事や病気など不測の事態に広く利用できるようにすることが望ましい。

5)大学は、施設・設備の提供のほか、運営費の一部補助という形で支援していく。また、財政的支援だけではなく、育児カウンセリングや発達・健康相談などについて、医学部・教育学部をはじめとする関係機関と十分な連携を取って進められることが望ましい。学内で身近に発達過程の幼児・児童と接触することは、学生の教育上も好ましいことであると考えられる。