第2節  留学生育児支援アンケート結果報告

調査の概要:
本学の男女共同参画推進の一環として学生と教職員を対象に育児支援についてのアンケート調査を行ったが、留学生の場合について、言語・文化や生活状況の多様性を考慮し、日本語・英語併記でアンケート調査を実施し、結果を別に集計した。内容は学生・教職員対象のアンケートと同じである。留学生の場合の特徴をまとめ、大学として可能な支援のあり方を提案する。

回答者:119名(回収率11%)
男/女および未婚/既婚の割合は、ほぼ同率。既婚のうち別居が11%。
出身地域は、東アジア57%、東南アジア29%、その他地域11%。

結果の概要:
1) 回答者119名のうち45名の留学生が、1人〜3人の子どもを持ち、そのほとんどが小学生以下である。そのうち3分の1は留学生と別居している。子どもを持つ留学生の42%が、就学と育児の両立には、問題や困難が「非常にある」と答え、「ある」と合わせると67%になる。
2) 出身国と日本との貨幣価値の差や、外国人ができるアルバイトが少ないことにより、経済的な問題が大きい。また、家賃の安い公営住宅は大学から遠い場合が多く通学に時間がかかるため、就学、育児、アルバイトの時間が充分にとれないという時間的な問題がある。自宅または大学の近くに保育園の空きがない場合には遠くの保育園に通うが、車を所有しない留学生は多く、負担が重い。これに加えて査証や奨学金の期間の制約があるため、時間的問題は大きい。別居の理由も一般にこれらの問題が原因になっている。
3) 子どもを持つ留学生の84%が大学からの支援を望んでいる。支援策として経済的支援(学費免除や学内でのアルバイト斡旋など)を望む意見が最も多く、保育園設置の希望、また入園制度や育児方法に関しての大学と園の連携体制やアドバイス制度を求める声がある。留学生が住める家族寮の提供を望む意見もある。
4) 留学生が日本で同居している就学前の子どものうち、4分の3は保育園に通園している。東山キャンパスに保育園が設置された場合「利用する」が10名、「条件によっては利用する」が6名、計16名であった。夜間保育園を現在利用している人はいなかったが、保育園の延長保育や小学校の放課後および長期休暇中の保育を望む声がある。東山キャンパスに夜間保育園ができた場合の利用希望は、昼間保育希望よりも少ないものの「利用する」が7名、「条件によっては利用する」が6名、計13名である。
5)  留学生と同居している小学校低学年の子どもは5名と少ないが、そのうち4名が学童保育所やトワイライトスクールで夕刻まで過ごしている。東山キャンパスに夜間学童保育所ができたら、利用するのは3名、条件によっては利用するが1名、計4名である。
6)  回答者全員に尋ねた大学設置の保育所形態については、産休明け後3歳児未満までの保育所設置の希望が最も強く、次に3歳児から未就学児までの昼間の保育所、そして未就学児および小学生の必要な時の一時保育所の設置を求める声が多い。50%が大学の医療機関と連携がとれるような保育所を望み、看護師を置いた病後児保育の要求も強い。保育費については意見が様々であるが、留学生の収入状況によって額を変えるという、現在の認可保育園と同様の制度を求める意見が多い。
7)  保育施設設置以外では、経済的支援を求める声が50%と最も多く、次に就学形態の柔軟化や就学時間の短縮の希望が続く。
8)  留学生の特徴として、言語・文化の問題が多く挙げられた。現在子どもが保育園に通っている場合、園スタッフとの連絡がうまくいかない、通信物が理解できない、差別がある、等の問題が報告されている。外国の子どもたちの保育について知識や経験を持ったスタッフ、外国語を解すスタッフがいる保育園、個性や知恵を発掘できるような保育園を望む声がある。また、多文化の環境を学内の国際交流や大学生の教育に活用すべきであるという意見もあった。

提 言:

以上より、優秀な研究者や学生を外国からも受け入れ、その研究環境や住環境を整えていくためには、大学から次のような支援があるとよいと思われる。

1)経済的・時間的支援
・家族寮提供:現在名古屋大学の学生寮で留学生が家族で住める部屋は「2部屋」だけである。大学院生の状況を考慮して家族で住める寮を増やすことが重要である。
・学内でのアルバイト:学内でアルバイト制度を作り、留学生を含めた大学院生に斡旋することは、学生を経済的に支援することになると同時に、大学の多言語・多文化環境、国際化を活性化させるのに役立つ。
・学内保育施設の設置:名古屋大学職員・学生の子供を対象とした保育施設を設置する場合には、経済的・文化的背景が日本人とは異なることが多い留学生の状況を考慮に入れ、保育料等を補助する制度や、言語・文化の多様性に対応できる環境を作るとよいであろう。

2)大学からのアドバイス体制
育児や保育園に関する情報について、大学と保育施設が連携しアドバイスできる体制を整備することで、留学生がより安心して就学と育児の両立がはかれるようになると考えられる。