第3節 討論と提言

(伊藤)それでは、第3部に移らせていただきます。第3部では、1部、2部のお話を踏まえまして、女性教官がなぜ増えないのかをはじめとして、女性の就業、就学環境問題について、パネルディスカッション方式でご議論をいただきたいと思います。男女共同参画推進に向けて本学が方向性を是非ここでまとめていきたい、と考えております。

コーディネーターとして、本学の総長補佐の増田知子教授にお願いをしてございます。また、パネラーでは、第1部でご講演をいただきました、名取はにわ先生、大澤眞理先生、名古屋大学女性研究者懇話会の代表であります束村博子先生、そして第2部で報告を行っていただきました飯高先生、後藤先生。以上の5名にお願いをしてございます。活発なご議論を期待しているところでございます。それでは、増田先生よろしくお願いします。

(増田)では、第3部「討論と提言」に移らせていただきます。今日は第1部、第2部で大変、内容の濃いお話をいただきまして、どのように展開させようか思案しています。3部ではあらたに、名古屋大学女性研究者懇話会の代表で、生命農学研究科の束村博子助教授にご参加いただきます。束村先生は、日頃、共同参画の推進と大学の組織における女性教官、職員のあり方について、たいへん積極的な意見をお持ちです。1,2部の内容を聴いて、どうお感じになったか、どうお考えになったか、ぜひ最初に口火を切っていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

(束村)こんにちは、束村博子です。私は、生命農学研究科の助教授ですが、なにを間違ってか、名古屋大学の女性研究者懇話会の代表になりまして、その関係でこちらに来ております。第1部の名取先生と大澤先生のお話は、大変よくわかり、さすが、これは逆差別になるでしょうか、女性の方は話がうまいという風に私は思いました。ありがとうございました。理路整然と大変わかりやすかったと思います。

それから、ここにいらしてる方々、いつもの会に比べて女性が大変多いと思います。今回が男女共同参画シンポジウムということで、女性の興味が強いということがあったと思うんですが、こういう話は男性にこそ聞いていただきたいと、いつも私は思っております。ただ男性の方、今日来てくださった方は大変得をされたんではないかと、私は思っています。特に第1部の基調講演では、女性を登用することは、女性を平等にしようとか恵まれない女性をよくしようということだけではなく、女性を登用すると社会が良くなるということを、理路整然とよく語っていただけたという点で私はとても勉強になりました。今回ここに参加された男性はとても得をされたと思う次第です。パートナーとしてこれから女性を選ばなくてはならない若い男性も、またパートナーに「有職夫人」を持っていらっしゃる中高年の男性にとっても、大変得されたのではないかという風に思っています。

やはり女性がいきいきと生きていける社会じゃないと、男性もいきいきと生きていけないと、私はずっと強く主張してきております。今回その理論に加え、データもお示しいただいたのがとても心強く思いました。今後、私も参考にさせていただきたいと思います。

第2部に関しましては、私が意外に思ったのは、最近の人事に女性を起用しているパーセンテージが高かったことです。名古屋大学全体を通してのパーセンテージを今回示していただきまして、報告者の飯高先生にはありがとうございましたと申し上げます。これから少し明るいかなあ未来は、という風にうれしく感じました。しかし、男女共同参画に関する話をしますと、皆さん、「いいよ、そのことは。もちろん男女共同参画OKだ、これからもっと推進しなきゃいけないよ」

と、皆さんおっしゃるし、むしろ反対してはいけない空気があると思うんですね。ただし、総論は賛成なんだけど各論になった時にどれほど、今いらっしゃる男性の教官の方々、あるいは職員の方々が、本当にそのことが必要で、大事で、心から積極的に応援したいと思っていらっしゃるかというのは、かなり疑問に思う場面に出くわすことがあります。その辺に関して、総論賛成各論反対っていうことが、それぞれの部局においてないだろうか、ということをいろいろ考えていただきたいなと思いました。

名古屋大学は、男女共同参画がものすごく進んでいるということで、全国的に注目されているということを認識しております。時々、「話をしてください」と言われまして、「名古屋大学女性研究者懇話会代表」という名前、肩書きだけで呼ばれて話をすることがあるんですが、本当にそれが実体を伴うようにすることが必要であると、私は切に感じているところです。とりあえず今日の話をお聞きしましての、コメントをさせていただきます。ありがとうございました。

(増田)どうもありがとうございました。各論に入るとかなり厳しい議論になってくると思ういます。実はその各論として、国立大学にとって大変大きな課題があります。国大協の「女性教官比率20%への引き上げ」ということでございます。このことについて、分野によってそもそもの女性の候補者が少ないとか、女性の大学院生数が少ないというお話が部局長の先生方から出ております。これは先ほど名取さんが、企業等の組織で「昇進させようとしてもそもそも女性の適任者が少ないんだ」という返事が、必ずといっていいほど管理職から返ってくるというお話を紹介されました。大学もこの点において、相通じるものがあるのかなあと思います。そこで、この第3部で紹介していただきたいと思っておりました、日本学術会議の状況について、名取さんから情報提供をお願いいたします。

(名取)私は、平成11年7月から平成13年1月まで、総理府日本学術会議事務局の学術部長の職にありました。赴任した当時は、210名の会員に、女性は2名と1%にも満たない状況でした。当時、日本学術会議は、平成13年1月6日(省庁再編日)以降、暫定的に総務省に移され、同日、内閣府に設置されることになる総合科学技術会議でその在り方を議論される、ことが決まっておりました。会員は自分達で改善努力をしようとされ、内閣府に位置付けられることが望ましいとしておられましたが、具体的改善策の一つとして男女共同参画の方向も出てきました。

そして、平成12年6月に、「女性会員比率を今後10年間で10%まで高める」という目標を決定しました。吉川弘之会長が、会員の推薦学協会に、再三、女性の推薦を呼びかけたこともあり、同年7月からの第18期会員には女性が7人と、過去最多数になりました。

(増田)ありがとうございました。だんだん本音の議論に入ってきたと思いますので、飯高先生、ヒアリングで先ほどとても美しくきれいにデータを出していただいたのですが、そのデータからはみでた部分についてちょっとご紹介していただければと思います。よろしくお願いします。

(飯高)ヒアリングで表に出せないような、というほどではないのですが、私は「提言」の周知が充分行われたとのデータを示しました。しかし実は、ほとんど「提言」の冊子は読まれていないことは明らかで、反応が極めて乏しいようです。ヒアリングの時に、部局ではどういう反応がありましたか?構成員からの反応はありましたか?と聞いても、反応はほとんどないというのが、もっぱらの回答でありました。「このような冊子はたくさんもらうので、もう誰も読みませんよ」というような具合です。確かに、僕も例えば、なんとかの将来がどうとかいうのをもらいましたけど読んでませんし、あまり人のことは言えないかもしれませんが(笑)。あとは、長すぎるのでダイジェスト版とかパンフレットを作ったらどうか、というような意見がありました。

数値目標に関しては、先ほどからあるように、総論は賛成だが各論は反対です、各論で反対している人は、総論で反対しているわけじゃありませんという傾向が見られます。各論では、賛成と反対の半々ぐらいのような印象を受けます。達成が可能な部局は放っておいてもどんどん女性が増えていっています。名大に男女共同参画推進W.Gを作る以前から増えて、もう20%を軽々と超えている部局もあるわけですが、その反面、無理なところは何をしてもだめだろうというような部局もございます。そういう風に半々、どちらかに分かれてスプリットしてしまってるような、そういう印象があります。

ポジティブアクションに関して言いますと、よく聞かれる言葉として、「女性教官は、ポジティブアクションに反対することが多いですよ」という意見を多くの部局から言われました。これはここでちょっとお聞きしたいんですけども、本当にそうなんでしょうか?女性教官はポジティブアクションに反対するんでしょうか(笑)。部局長はみな男性ですから、男性が「どうかね」って聞くとそういう風に答えてしまうのかもしれませんが。そこら辺がちょっと疑問に思いました。それから無理矢理数だけ増やせば質が低下するとおっしゃる方もたくさんいらっしゃいますし、僕も示したように、女性応募者が少ないのでとにかく無理なんだというのがかなり多く見られました。それから国大協の目標に関しては、2010年という期限は無意味であると、これは疑問である。こんなことは誰が考えたんだというような意見があります。20%という目標に関しては、データでお示ししたとおり、そんなに妥当性がないとは言わないんですけども、2010年までという期限に関しては、かなり疑問が示されました。

最後ですけども、女性の院生がとにかく就職難で困っていて、それから女性教官の産休、育休の間に、じゃあ誰が業務を行うのか、そこら辺をはっきり示してほしいというような意見がありました。以上が、あまり表に出せないような意見じゃないかと思います。よろしいでしょうか。

(束村)「ポジティブアクションに女性教官が反対する」ということについてコメントさせていただきたいと思います。時々お話しすることなんですけど、確かに、女性教官で特に成功された年配の方が時々言われるんですよ。「あなたは頑張りが足りないんだ」と。「私は頑張った。男以上に頑張った」とか言われるんですね。「女性だからって優先されるのは心外だ」、とかそういうことを言う方がいらっしゃいますが、それは間違いだと思います。男性教官、男性職員、すべてを見てください。すべての方が頑張っているでしょうか。別にすべての方が頑張らなくてもいいんじゃないかというのが、どこの社会でもあるんじゃないでしょうか。100%の方が頑張らなくても、ある集団の30%の人が頑張っているのが社会だよ、という風な考え方をしますと、女性でも頑張りたい人は頑張ればいいし、頑張りたくない人は普通にやればいいんです。その程度に考えていただければ、女性だから頑張った、あんたは頑張っていないっていう風に、成功された女性が言われるのは、女性が女性の足を引っ張っているという風にいつも考えます。ですから、もしこの中で成功された女性がいらっしゃるなら、女性の意見は男性が引用しやすいんですね。悪用されやすいんです、とても。女性がこう言うよとよく聞きますので、特に成功された女性の方は、発言に気をつけていただきたいなと私は切に願います。

(増田)わかりました。ただ、反論するわけではないんですが、大学の場合、能力主義で人事を行っているという原理原則がございます。優遇措置をとるということと、それとの兼ね合いをどうしていくのかということは、おそらく一番難しいところですが、避けて通れないことだと思います。能力主義による採用人事を崩せない、これはもうどの部局の先生方も、部局長の先生方も一律におっしゃってるんですね。そうすると、たまたま先ほどデータで女性のほうが採用率がいいということがあったんですが、実はこれにはおまけがあります。教官採用人事で、「性差関係なく評価したら、一番優れていたのが女性だった、だから採用した」という回答が多くありました。うちは差別してないし、一番優れた人をとったらたまたま女性だったと、いうことで、能力主義で女性を採用していけばいい、今の状態で自然増でいけば、おいおい20%になるはずだ。だから、国大協の2010年は、いくらなんでも厳しいんじゃないかと、そういう意見傾向が見られました。その点について、同じく高等研究機関、教育機関として、悩みを共有してくださってると思いますが、大澤先生、今のその能力主義による人事の採用について、東京大学もおそらくシビアな点があると思うんですが、その点、ご意見があったらお聞かせください。

(大澤)対外広報誌「淡青」で、「ジェンダーフリーの東京大学を目指して」という座談会をいたしました。その中で当然ポジティブアクションが話題になりました。それに先立って行った部局長アンケートにおいて、やはりそういった女性が嫌がる、あるいは、女性研究者の誇りを傷つけるっていうような回答があったりしたもんですから、それを素材に座談会をいたしました。座談会で出た意見を紹介することになりますが、どこの世界にでも抜擢人事っていうのはあるんですよね。そういう抜擢人事っていうのは、会社が左前になってきますと、傾いてくると、取締役会の末席だった人が10何人抜きでいきなり社長に、ということがあります。そういうとき、誰も抜擢された人の誇りが傷ついてかわいそうって言いません。どうして女性のポジティブアクションだけが誇りを傷つけるとか、力量を疑わしめるとかと言って、かわいそうがってくれるのか、とても不思議ですねと、我々の座談会では話をしました。

私自身の例を申しますと、東大社会科学研究所の教授会メンバーとして、女性は初めてでした。

それから昨年二人目の女性が助教授として着任するまでは、紅一点だったんですけれども、はっきり言って私は自分が採用されたことについて、女性であったということは、不利ではなくて有利に働いたと思っています。けれども、そのことによって私の誇りが傷ついたり、やだなあというような感覚はまったく持っておりません。また各種の政府の審議会などでも、多分、女性委員比率の数値目標があるせいでしょう、また役所が考える有資格者というのがわりと範囲が狭いということもあって、いろいろな審議会に私が委員などで任命されて出てまいりますと、明らかに年齢とか経験において、私は他の男性の委員に比べて浅いということがあるわけです。けれども、だからといって、私がいやぁな気持ちになるということはなく、またそれで縮こまっているということもなくてですね、自分の専門や能力知識に応じてどんどんと発言をしているというような状況です。ですから、採用されたいきさつというのがどうであれ、その先その人が能力を発揮することは充分にありうることなので、そこに期待をする。同様に、男性の間でも抜擢人事というものが行われるということだと思います。ですから、女性が嫌がるというのは、本当にちゃんとサーベイしたんですかっていう気がします。

ただし、ポジティブアクションと言ったときに、まず数値目標ありきで、それがとにかくつじつまを合わせると、数合わせをするんだろうと思われがちなところがあるのかなと思います。これはアメリカなどで人種、そして性別に関連してアファーマティブアクションが行われ、それが逆差別だという訴訟も起こって、最高裁の判決で、特に教育面で、大学の入学定員の割り当てのようなことは憲法違反だという判決も出てしまっておりますから、そのイメージが強いんだと思います。

けれども、日本の男女共同参画社会基本法が規定しているポジティブアクションというのは、そういう数を最重要視するアファーマティブアクション型のものではなくて、一応数値や具体的な目標は掲げるけれども、むしろ重要なのは具体的なゴールを掲げておいて、それに向かってタイムテーブルをつくって、達成をなるべくできるようにする。しかし、最終年次において達成できていなくても無理矢理合わせる必要はない。むしろなぜできなかったのか、その理由をきちんと分析して、2期目の目標というのをまたきちんと計画をたてるという、いわゆるゴール&タイムテーブル方式です。しかも、公務員、大学などでの採用において能力主義の原則であるということ、この大原則を充分尊重した上で、能力において同等であれば、どちらか数が少ないほうの性別を優先するということがあってもいいのではないかという程度の、非常にマイルドなものでありますから、それほど心配していただくには及ばない。このプロセスを経て選抜されてくる女性というのは、必ずや非常に優秀な人であるに違いないと私は思います。

(増田)ありがとうございます。答がすこし見えてきたような感じがいたします。実は採用時の問題とはべつに、研究者養成の養成の段階で、裾野を広げるという意味で、専門分野に関心を持ってもらうことが考えられます。たとえば今、基礎的な能力が落ちているということで理系の方々が一生懸命、子供の頃から興味持ってもらって理系に来てもらおうと努力しています。おそらく、今文系はそういう努力を欠いていて、あぐらをかいているので、そのうち女性が理系に行って、文系には誰も行かなくなってしまうんじゃないかという危機感すらあります。そういう分野別の努力のほかに、女性の研究者養成の支援策をどうするのか?そこのところが実は今回のアンケートの回答では非常に貧弱だという結果になっています。ようやく、女性を採用しなきゃいかん、登用しなきゃいかんということになってきたが、研究者養成の段階で何かしてますか、いや、ほとんどしてませんということになっているわけです。その点について、共通して争いがなかったところなんですが、育児や介護等に関して支援策がなにかできないかということがありました。

これは自分の懐が痛まないということが前提にあるのかもしれませんが、組織としてなんらかの対応が必要であろうということで一致しています。しかし、実を言うとこれはお金のかかることでございまして、その点共有する価値観がないと、なかなか今後、独立行政法人化してからそういうところにお金を使うという合意は得られないと思うんです。この点について、ご意見のある方があればよろしくお願いします。

(束村)育児支援は、これから絶対、必要不可欠のことだと思います。育児とか家事については、先ほど名取さんから示していただいたように、女性がほとんどの作業を行っているんですが、男性はお気の毒なことにそういうことに関わらないんですね。なぜ私が、お気の毒だって言うかというと、私は農学部の教官でもありますが、しょっちゅうスーパーマーケットに行っている男性教官はどのくらいあるのかなとか、時々思うんです。たとえば社会に出て野菜がどういう動向なんだとか、中国産の野菜は今頃だいぶ駆逐されているんだとか、そんなことだって、日々の生活からわかってくることはたくさんあると思うんです。育児についても同様です。育児とか家事とかに男の人が関わることで、もっと社会が見えてくる、社会への視野が広がるので、自分の広い意味で、長い意味で研究などに生かすこともできる。社会に対する関わり方も深くなっていく。そうしたいう意味で、男性も家事育児に関わってほしいと思います。

ところで、もしたまたま自分のパートナーが働きながら子供を育てているとき、その子供を自分がみる予定の1ヵ月が来たとか、3週間みることになったというときに、育児の施設がなかったら、ということを想像していただきたいですね。今後この少子高齢化の社会を、働いて支える人数が、就労人数が減っていくことを解決するためには、育児をきちんと大学としてバックアップする体制を持つべきです。また、いくらお金がかかろうとも、今後法人化になる時に、ここに育児のきちんとしたバックアップの設備がありますよということは、顧客としての学生に対してアピールになるし、また、そういうところで育った子供たちと、子育てした学生にとって、大変重要な体験になるはずです。大学が積極的に育児支援を行うことの意味は、女性も男性も同じく人間として尊厳を持って生きていけるという、先ほどの大澤先生のお話にもあったような社会に近づくことだと思います。

(後藤)育児とか介護の問題なんですが、大学というのは高度な専門職を持ってみえる方がほとんどだと思いますので、育児休業というのはあまり取られないんじゃないかなという風に私は思います。現在、育児休業というのは3年間保証されてます。そのうちの1年間だけが40%ぐらいお金が出て、2、3年目はお金が出ません。キャリアを大事にする、または職場を大事にするということから言いますと、育児休業というのは、せいぜい半年ぐらいしか取られないんじゃないかなと私は思います。職場を維持して働き続けようという姿勢のある方、特に研究職とかそれから私が属してる医者とかそういうような方、それから専門の事務職の方もキャリアを大切に思えば、やはり産休明けですぐに職場に戻れるような体制を、大学としては支援しなければいけないのではないかと思います。保育所は7時頃に終わってしまいますが、夜間保育、それから常時保育、その育児の必要な時に育児の援助ができるような施設、そういうようなものがどんどん必要になってくるだろうと思います。先日、NHKの少子化時代という番組で、大統領府にも育児施設があるということを見ました。フランスなどは、あらゆるところに施設を持っておりまして、そういう施策をすべて講ずることによって初めて、先ほど名取さんのデータに出てきました特殊出生率ですか、一人の女性が生涯に産む子供の数というのがやっと1.86になったという、その政策を遂行するために8年かかったというようなことが報道されました。そういうことを日本としても真剣に考えなくてはいけないんじゃないかなと思います。

(名取)職場の保育室、育児施設の話が出ましたのでちょっとご紹介いたします。文部科学省には隣接するところに保育室をつくりまして、これは文部科学省だけでなく周辺の省庁の方とか、空いてれば民間の方なども利用していただけます。他の省庁のパパ、お父さんが連れてきて預けたりしています。この保育室は夜の10時まで開いていますけれども、だからといって育休を取るなということでは決してありません。育児休業、育児休暇、1年ぐらい取っていらっしゃる方、結構いらっしゃいます。中にはお父さんがちょっと交代で取ったりするケースもありまして、やはり子供を産み育てることが自然にできることが大切ではないかということで施設を運営しております。こういう試みというのはやろうと思えばできるものでございまして、目に見える保育室というのは、中央官庁では文部科学省が初めてなんですけど、実は警察庁とか警視庁とかが、共済からいわばベビーシッターを雇うお金の補助金というようなものもやっておりまして、共済組合がベビーシッターの会社と契約をして、共済の組合員であれば安いお金でシッターさんを利用できるようにする、ということはかなり前から行われております。この支援方法は各省に少しずつ普及したりしております。おそらく大学も共済組合がありますから、こちらの組合さえその気になっていただければ、組合員の中のお父さんお母さんのために、いろいろ工夫される余地はあるんではないかな思います。

(増田)具体的なお話にまで踏み込んだ形で、パネラーの皆さんにいろいろご紹介していただきました。先ほどの後藤先生のアンケートの結果では、母体保護に関する専門的配慮が十分あるべきはずの所であっても、適切とはいえない対応があること、そのために出産・育児が非常に負担になっていることが分かりました。制度をつくればそれで済むということではおそらくないと思うんですね。たとえば休暇制度があっても、それが取りにくい状況があれば意味はないということになるわけです。この辺のことについて、フロアの皆さま方のご経験ご体験、あるいは本音、いろいろおありでしょうからご披露していただけたらと思います。また、今日のお話全体に関わることでも結構ですし、個別、具体的なところでのご意見でも結構ですので、手を挙げていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。教師のクセで当てたくなってしまうという(笑)。それはいたしませんので、どうかどなたか口火を切っていただけると、こういうのは非常に話が展開しやすいですが、いかがでしょう。

(吉田)人間情報学研究科におります吉田と申します。いろいろうかがって考えたことがありまして、女性教官比率を20%に引き上げるための採用人事のことです。これは私も前から思っていたことで、昨日もそういう話をした会があって聞いたことなのですが、会社の場合は、機会均等法で賃金差もなくなってきて、若年層が増えてきたんだけれども、大学は昔から女性がいるんだけれども、それが遅々として増えてこない。増え方についても、カーブが民間企業に比べて、大学は最初から少しはあったけれども増えない。その理由として、会社というのはたいてい複数の人事採用ですね、10人とる、あるいは新卒を30人とる。そうすると、20%っていっても1以上の数になる。けれども大学の人事っていうのは、必ず一人です。単数人事だとそれに0.2をかけてもゼロになってしまうわけですね。次点にはなるけれども最後のひとりに残れないっていうことは、今までかなりあったと思うんです、多分。そこの部分だけでも、本当に公正な評価で能力が上か下かというのは、非常に難しいことだと思いますし、それに研究費の評価でもそうなんですけれども、そこでやっぱり同等、あるいは多少下でも女性をとりましょうっていう雰囲気があるかないかというのは、もっと違うことだと思います。そうするとたとえばの話が、独法化したときにも、やっぱり1の人事かもしれないんですけど、そこをたとえば2つ、3つの人事を一緒にすることによって、かなり違ってくるんじゃないかというお話を昨日の会で聞いたんです。私は、なるほどと思ったことが、もうひとつがあるんです。私がデータ持ってるわけではないのですが、愛知大学の坂東さんという物理学の方がおっしゃって、女性の年齢と業績、それはペーパーの数だとかインバイテッドレクチャーの数だとかいろいろなんですけれども、比較すると子育て期にどうしても下がる。しかし、50歳を越したところになると男性教授を抜かしてもっと上がるっていうんです。トータルとして女性が生涯の中での業績、いわゆる社会に対する責任ですね、高等教育を受けた者としての返せる責任というのは、30代40代のところでは、どうしても下がる可能性がありますけれども、その後の時期で上がるのだから、長い目で見て採用してもらったらいい。あるいはそういう評価の見方もあるんじゃないか。先ほど束村さんがおっしゃったように、みんなが頑張らなくてもいいんじゃないかというのは、人生で頑張る時期、頑張らない時期のメリハリも実は必要なんじゃないかって言うか、そうせざるを得ない状況というのもあると思うんですね。ただし個人個人が輝くってことは、この時間頑張りたいっていう若いたとえば30代の女性がいたら、それへの施策も必要でしょうし、ここだけはちょっと頑張れないけどもここを過ぎたら頑張るっていう、そういう期待にですね、期待値も含めた人事採用っていうのも、実は本当は必要じゃないかなと、非常に難しいことだとは思いますけども、そういう風に感じました。

(増田)実際の人事で数値目標などということになると、当然いろいろご苦労があると思うんですが、今の吉田さんのご意見に対して、他の方から意見があればぜひお願いしたいんですが。女性を採用する、先ほどの同等でという、あるいは同等よりちょっと下でもということについて、いかがでしょうか。

(飯高)ヒアリングでよく聞かれた意見で、どうしても研究、教育の質が低下するんじゃないかというすごい不安感が、部局長の方に蔓延しているというのを感じました。今法人化に向けて、大学の競争力を上げていかなければならない時に、男女共同参画と競争力を上げるっていうことが、お互いどうしても矛盾するんじゃないかという意識がかなり強いと思います。今おっしゃったように、トータルで見ると女性教官のほうが業績が多くなるんだというデータがもしあれば、そういうのをどんどん発表していただいて、その不安を払拭するような、各部局長の不安は杞憂であるという、そういうデータをどんどんお示しくださればもうちょっと進むのかなという印象を、ヒアリングの中から感じますね。

(大隅)東北大学からまいりました大隅典子と申します。東北大学の男女共同参画の委員をしております。東北大学は1913年に初めて女子学生3人に門戸を開放したという歴史のある大学なんですが、現状はなかなか進まないということがございます。男女共同参画にこれから真剣に取り組もうということで、一昨日、そういったシンポジウムを開催いたしまして、総長からの宣言文の読み上げもありました。

今のポジティブアクションの件なんですが、昨年度に私ども、全職員のアンケートと部局長アンケートを行いまして、その解析等を行ってるところです。個人的な意見としてこれは申し上げたいんですが、これは女性をどう採用するのかということの問題だけではないと思います。先ほど本当にきれいにデータで示されてましたように、新しく採用される中では女性が採用される率が、17.何パーセントでしたか、およそ20%の数値目標に近づいている。これは極端な言い方をするとすれば、男女限らず、働いてない、貢献されていない、そういった教員の方がいらっしゃったとして、そういった方を「排除」という言い方はよくないかもしれませんけれども、ある時に「じゃあもう少し新しい方に代わっていただきましょうか」というようなシャッフルが多くなれば、おそらくはある程度自然に変わっていくということもあるんじゃないかなあと、私自身は個人的に思っています。

(増田)厳しいご意見だったと思います(笑)。ご指摘の点は、能力主義と競争主義の問題に関わるかなと思います。つまり、長い目で見たら女性は競走に勝てるんだけど、短い距離だと女性は不利だ。出産・育児・家事に専念するM字型にはまって、競争から脱落してしまう、ということかなと思います。他にご意見あればぜひ率直に、あとで記録には出させていただくんですが、この場はお名前は伏せますので、どうか本音を、本音トークでよろしくお願いいたします。

(束村)ポジティブアクションについて、ちょっとコメントさせていただきます。採用人事で同等に評価するという問題ですが、男女が評価のところでだいたい同じだった時に、必ず今までは男性が採用されてきたという歴史があると思うんです。私は、どうやって評価するのかは難しいとしても、同等だと思えば女性をとろうというバックグラウンドを持ちながら選考すること自体が、非常に重要だと思うんです。なぜなら、よく話題に出すことなんですけれども、特に大学というところは男社会でして、教官=男性という思い込みがあるんです。私が研究室に居ると、「先生いますか」とよく言われるんです。私も先生なんですけど、ってよく言うんですが、「女性の教官」というイメージがまだまだないんですよ。人事をする人も頭の中に女性を描きながら教官人事をしないんですね。「男女共同参画、結構だ、いいんじゃないか」って言う人でも、自分のところの人事をやるときに男性しか頭に候補者が浮かばない。まずそこが問題であると、私はずっと思ってるんです。今、男女共同参画で女性を優先的にあるいは積極的に採用しようと、上からでもなんでもいいから、ある程度そういうお達しがあったり、情報提供があれば、「女性の人事を考えなきゃいけないということがあったな」ということが意識されて、随分人事も変わるんじゃないかということを、日頃感じています。今、少し名古屋大学で女性教官の採用率が上がってきているというのは、名古屋大学の男女共同参画に対する地道な努力の表れだと思ってます。

そちらにいらっしゃる池内先生、なにかコメントいただけたらと思ってるんですけど、いかがですか。

(池内)先ほど名取さんからだされました学術会議で、私は特委(特別委員会)の幹事をやっておりまして、2000年に学術会議から要望というのを出したわけです。そこで今の人事の問題とか、別姓を使う問題とか、様々な問題で各研究機関等に要望というのを出しました。記者会見した時にまさしく新聞記者から、「これは、逆差別じゃないか」と、いう質問が出たわけです。それに対して、その時の委員長であった尾本さんは、我々特委で考えてきたことは、「今こそが異常なんだということをまず見ましょう。今の状況がいかに異常かということで、それを前提にすればこれぐらいのことがどうしてできないんですか」ということを言われたんです。国大協の目標は20%と言いましたが、今、国立大学の旧7帝大へ行きますとおそらくその半分以下ですよ。最も悪いのは旧7帝大ですね。そういう意味で、まさしく総論ではいいこと言うんだけど、現実の世界ではやれてないというのが、まさに権威主義の大学であると僕は思っている。その点を打ち破らないとなかなか実現しないと。そのためのポジティブアクションであって、ある程度、10年なら10年という期間を定めていかに近づくかという、ある程度層になれば変わるわけですよ。当たり前になってくる。その当たり前になる期間が、先ほどのように一人、一人とっていく限りは小選挙区制ですから、これはなかなか通らない。ですが、ある程度束として採用して、10年なら10年滞在するという慣習を身につけるとそれは当たり前になると思うんですね。そうなると老・壮・成のいろんな年齢層の教官が並ぶわけです。さっきも言われたように、年齢層がそろえば、女性は年取ってからでも充分力があるということが現実に実証できるわけです。ところが、今はそういうデータ集めるのが非常に大変で、それすらできない。このこと自体が異常な事態であり、それに対しては我々はかなり意識的に、たとえば10年ぐらいのスケールで今の状況を変えるということを積極的にやりましょうというのが、学術会議の特別委員会で議論してきたことです。そういう点で動いてきたんですが、なにせ学術会議は今やまったく力のない組織になっているので、なかなかそういうことができませんが、なるべくそういう議論をして、いろんな場で広げたいと私は思っています。今の事柄に関して、名古屋大学女性研究者懇話会でもしゃべったんですけど、要するに性差より個人差ですよということです。まず個人の問題が先であって、先ほどの学生たちを見ても、性差よりも個人差が大きいですね。それから先ほどの、たとえば女性の教員割合が1割だとしても10人に1人でしょ。で、ほとんどの教官の男性の10人に1人はだめな人がおるわけですよ。これはもうほとんどの方が知っていることなんですね。僕は、実は同僚評価が一番よくわかっていて、しかしそれは表に出ていないことである。そういう実態があって、10人のうち1人を女性にするのがなにが怖いのかというのは、私の一番正直なところです。まあちょっと言い過ぎましたけど。

(言語文化部)名古屋大学の言語文化部の者です。私どもの学部、国際言語文化研究科も含めてですが、男であるとか女であるとかということはもうほとんど意識せずに、一番優秀な人をとるようにずっと努めてきております。と、確信しております。かなり研究科の女性教官の比率は高いのですが、先ほどたとえば、仮に一番候補者の中で優秀な候補者が男である。男性である。ちょっとその下に女性がいるといった場合にですね、女性を採用するということがなかなかできない。できないというのは、なにか公正さに欠けるというそういう気持ちが強いです。そういう場合、私どもは勇気がないんでしょうか。公正さを保たなくてもいいんでしょうか。そこら辺のところ、ちょっと教えてください。あるいは何かおっしゃってください。

(大澤)私が申し上げていることは、もっとも優秀な候補を差し置いて、二番手三番手をとるべきだということを言っているのではなくて、同等であれば多様性を増す方向で人事を行うという原則はたてられないものだろうか、と言っているわけです。ところで、私が所属している部局のことを考えましても、ここ何年間でいくつかの人事が行われましたが、必ず一番手の人が採用できてるなんてことはありません。3人ぐらいまで絞ってですね、一番手に断られ、二番手に断られ、三番手に交渉しようと思ったらどっかにさらわれて、ということが、もう日常茶飯事でございまして、そういう意味ではやっぱりリストを作っておいて、順次交渉するというようなことになるわけですから、必ずもっとも優秀な一番手の人だけを採用しているなんていうことは、どこの大学にもないと思います。

部局にもよるんだろうと思いますけれども、それがすべての大学において、いつも実現していると仮定するのはおかしいのではないかということですね。それから数を無理矢理合わせると質が落ちるんではないかというご意見ですけれども、ある集団が多様性を持たずに均質である時に、その集団が競争力なり生産力を発揮できるというのは、かなり特殊な条件に恵まれたときなんじゃないかと思います。日本の社会では、日本の企業が国際競争力があった60年代70年代80年代、かなり世界史的に見て特殊な条件に恵まれた中で、均質な集団と言うのが、ものを言わないでも眉をひとつ動かしただけで部下は上司の気持ちがわかってやっていくみたいな中で、競争力を発揮できていたということはあると思います。けれども、それは非常に特殊な条件のもとであって、それから大きな変化が起こる、連続的でなくて飛び越えるような変化が起こったり、またその対応が必要であるような状況においては、組織というのはできる限り多様であるということが、生産力を高め持続可能性を高める方法だと思います。みんなが均質ですと、同じような病気にみんないっぺんにかかっちゃうとか、今はこういう理論が、あるいはこういう研究がはやりだとか思ってダーッと行った時に、世界の中で取り残されているなんてことはいくらでもあるわけなので、そういう意味で多様性を増す、そのひとつの側面として男女共同参画ということがあると思います。東大では、前総長の蓮實先生がいつも言ってらしたのは、年齢と国籍と性別による差別、格差というものをなくして、その3つの意味で、少なくともその3つの意味で多様な組織をつくるということが、明日の東大をというか、今後の東大を強くしていく道だとおっしゃってました。男女共同参画だけで多様性が充分確保できるわけではなく、定年制の見直しによる年齢の多様化、それから国籍、さらにもうひとつ言えば、出身大学の多様性というのもファカルティの中で確保していくということも、非常に重要になります。

あうん阿吽の呼吸や眉の動きでわかってしまうというのはやっぱりまずいわけなんですね。そういう組織では、新しい発想新しいアイディアというのが、具体化されてトライされていくっていうことは少ないと思います。今までは、優れた研究者は放っておいても論文を書いて、どんどん業績をあげて、サイテーションリストも増えていくみたいに思われていたわけですけれども、やはり今後のことを考えますと、もっと教育というものに力を入れなければいけない。論文をいっぱい書いている研究者が、優れた教育者であるということは、そんなには一致はしない、むしろ相反する面が大きいのではないかと思います。質を高めるという時にやっぱり組織として、また学生院生に対する教育の質ということで考えたならば、多様なファカルティであって、その中で切磋琢磨しあう。具体的に言えばファカルティ・ディベロップメントということが非常に大事でして、そういうことをしないでおいて、質が下がるとかなんだとかっていうことを言っているのは大変おかしいんではないか、と思います。

ポジティブアクションを真剣に考えている多くの人が考えていることというのは、年齢経歴等において同等、この同等というのがなにを数値化するかというのは問題のあるところではありますけど、まず原則としてそういうものをたてた上で、候補者のバックグラウンドなり業績なりというものを精査していくなかで、やっぱり同等であれば、組織の多様性を増す方向で人事を行っていくということには合意が得られるのじゃないだろうか、と思います。

(増田)一番優秀な人をとるということについては、ご発言はお一人でしたが、おそらくもっとも大学に根強く、かつ誰もがそうでありたいと思ってることですので、簡単には否定できないことだと思います。また、今大澤先生がおっしゃったような多様性のあり方についてですが、そもそも多様性のないところで多様性が大事だ、考えろと言われても、そもそもなにが多様性なのかわからないという深刻な問題があります。これは、ジェンダーの問題もそうでして、ジェンダーに敏感な人材をと言われても、そもそもそんな人材がいっぱいいるんだったら、共同参画をやらなくてもいいわけです。そうした人がいないから、共同参画推進の必要があり、それに努力しているんですね。こうなると、卵が先かにわとりが先かの話になってまいります。

お時間が来てしまいましたので、活発にご議論いただいた中で、強引にまとめるつもりはございませんけども、一つは、育児、介護等に関することについて、なんらかの支援策、具体的な支援策が、就業・修学環境においてプラスになる、メリットになるということ、少子高齢化社会においていかにそれが必要であるかということ、今日のお話の中で事実をもって語られてきたと思います。そこで、育児・介護支援について積極的に整備をしていく方向、これはおそらく異論がないところだと思います。それを今回の、1部2部3部を通した上での方針としてここで決めていきたいと思います。

二つ目は、やはり数値目標をめぐる女性教官比率の引き上げの問題について、正面から議論していくということです。できるとかできないとかいう単なるお返事ではなくて、これを実際に進めていくためにはどういう障害があるのかとか、あるいは譲れない線はここであるということを明確にする。たとえば能力主義とか一定の競争主義とかあるわけですね。それと、短距離競争では負けるけど長距離競争なら勝てるという女性を、どうやって採用人事の公平性の中に組み込んでいくのかとか、そういったことをもっと前向きに、しかも具体的に議論した上で、数値目標の設定を考えていくことが必要です。もちろん、数値目標だけを一人歩きさせないということも重要です。しかし、それは数値目標設定に意味がないということではなくて、我々が背負ってる、ここから逃れられないという現実を前提にして、どうやったら実現していけるかということを正面から議論していくことなしには、意味がないということだと思います。

今申し上げました育児介護等の整備及びプランづくり等、それから女性教官比率をめぐって正面から議論をもっと深めていくということ、この2点についてはご異存ないと思います。シンポジウムのまとめとしては消極的だと、池内先生に叱られるかもしれませんが、この程度のところでとりあえず方針として決めさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか(拍手)。

ありがとうございます。じゃあこれで3部を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

(伊藤)パネラーの先生方、増田先生、それからフロアの皆様方、この討議に加わっていただきまして、本当にありがとうございました。今、おまとめをいただいた2点について、今後私どものワーキンググループを中心にして、具体的な行動目的を、行動目標をつくってまいりたい。そんな風に考えております。それから本日のシンポジウムを通じまして、きわめてポジティブアクションが明確になったのではないかという印象を持っております。男女共同参画社会基本法というものがなぜできたかということを、よくお考えいただければ、このポジティブアクションがきわめて明確になるのではないか、そんな風に思ったところでございます。それでは以上をもちまして本日のシンポジウムのプログラムを終わらせていただきます。このシンポジウムの結果につきましては、アンケート、ヒアリングの結果とあわせまして、本年度報告書として刊行してまいりたいと考えております。報告書が出たら、必ずお読みをいただきますようによろしくお願いいたします。