子連れ海外出張体験記
多元数理科学研究科 伊藤 由香里
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5.二人目誕生!
日本に帰国した直後、こんどは北京でICM(国際数学者会議)があり、夫が招待講演者だったので、家族で出席し、その前後のサテライトコンファレンスでは他の中国の都市にも行きました。4年前のICMに大きなお腹で出席した私は、今回も大きくはないけれどまたお腹に二人目を身ごもっていました。イギリスから帰国後、夫と娘は京都に住み、私は東京から週末に新幹線で京都に移動していましたが、切迫流産で医師に、仕事も新幹線での移動も禁止されてしまいました。一人目の妊娠中にドイツ国内のみならず、アメリカにも移動していた私にとっては想定外の出来事でした。しばらくして京都に移動し、産休に入ってからは安定していて退屈だったので、大きいお腹で京都大学のセミナーに出席していました。また京都と東京を行き来する生活は続けられないと思い、いくつか公募を出していたところ、名古屋大学に来ないかというお話を頂きました。産休明けの1ヶ月弱だけ都立大学に行き、息子が生まれて3ヶ月目には名古屋大学に移り、京都からの新幹線通勤が始まり、すでに10年を超えました。
6.家族でアメリカ
子どもたちが小さいうちは気軽に海外出張に連れていくこともできましたが、娘が小学校に入るとなかなか学校を休むこともできず、子どもを遠い実家に預けて出張に行くこともできず、ほとんど出張に行けなくなりました。しかし、娘が小学3年生になり、下の息子が4歳のとき、家族で半年間、アメリカに行くことにしました。行き先は娘が生まれたプリンストンでした。たまたま前回と同じようなメンバーが研究所にいたので、娘と同じ頃に生まれた子どもにも再会しました。また前回とは異なり、子どもたちはそれぞれ、小学校や保育園に通い、アメリカの学校教育も体験できました。子どもがいるおかげで、ハロウィンやクリスマス、バレンタインなどの行事も楽しめました。研究所内の住宅地は広い芝生の中にあり、学校からスクールバスで帰ってきた娘は他の子どもたちと家の周りを駆け回って遊んでいましたし、息子の保育園も研究所の中にあり、とても便利で快適な生活でした。アメリカでは、子どもに対する大人の態度が日本と異なり、小さなことでもすぐに褒めてくれるので、あるとき息子に「お母さんは、ぼくにあんまりGood Job!って言ってくれない」と言われてドキリとしたこともありました。子どもたちは最初、全く英語が話せませんでしたが、小学校では母国語が英語でない児童のための英語の特別クラスもありましたし、保育園に通っていた息子でも、当時の出来事は日本語で会話したように記憶しているようです。家では日本語の本を読んでいましたが、街中に全く日本語のない生活をしていると娘は漢字を忘れてしまうし、息子はひらがなよりアルファベットを先に覚えるという予想外の現象もいくつかありました。日本人だからと目立つこともいじめられることもなく、自分が好きなことを自由にできて、みんながお互いに褒め合う環境はとてもよかったです。私も子どもたちを通して、よりいろんな世界の人と付き合うことができて楽しかったです。もちろん研究も世界的な研究者が集まるセミナーは刺激的でした。アメリカもまたイギリス同様、大人だけが参加できる研究所のパーティなど大人だけの時間もあり、その際も簡単にベビーシッターを見つけることができて、子どもがいるから我慢しなくてはならないこともなくて、いろいろと快適に過ごせました。