【第1節】 基調講演



伊藤 それでは第1回名古屋大学男女共同参画シンポジウムを開始したいと存じます。本日の司会を務めさせていただきます名古屋大学男女共同参画推進ワーキング・グループ主査を務めております副総長の伊藤でございます。どうかよろしくお願いをいたします。

本日は大変お忙しいところを本学の第1回名古屋大学男女共同参画シンポジウムにお越しをいただきまして、ありがとうございます。ご案内のとおり、本学におきましては平成13年3月、平成14年3月の2回にわたりまして、この問題に対して提言を全学に対して提示をいたしました。本学におきまして、男女共同参画社会実現に向けて一生懸命取り組んでいるところでございます。

本日は、ここに第1回のシンポジウムを開催することにいたしましたところ、このように多数の皆様方がこの問題について関心を持っていただき、お集まりをいただいておりますことを、私どもとして大変喜んでいるところでございます。

本日のシンポジウムの構成でございますが、3部から成っております。第1部では、文部科学省生涯学習政策局主任社会教育官でいらっしゃいます名取はにわ先生、それから東京大学社会科学研究所教授でいらっしゃいます大澤眞理先生のご講演をいただき、第2部では、先般行いましたアンケート調査およびそれに伴うヒアリングの結果について発表させていただき、第3部では、全体を受けまして本学の男女共同参画推進に向けた取り組み、特に日本の現状と課題として、名古屋大学の現状と課題についてご討論をいただくということにしております。

このシンポジウムを通じまして、ご出席の皆様方から積極的な討議への参加を期待しております。どうかよろしくお願いをいたします。

それでは、開会にあたりまして松尾総長よりご挨拶をいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

松尾総長 皆さん、こんにちは。司会の伊藤さんがあまり詳しく述べられますとこういう話はしにくいのですが、本学の責任者といたしまして、まずはこのように多数ご出席をいただきましたことにお礼を申し上げます。特に第2部の報告者、あるいは第3部のパネリストの先生方、文部科学省の名取はにわさんと、東京大学の大澤眞理さんには、大変お忙しい中、基調講演をお引き受けいただきました。心からお礼を申し上げます。

さて、この問題の背景といたしましては、平成11年に「男女共同参画社会基本法」が制定されまして、続いて「男女共同参画基本計画」の策定がありました。国大協の方でも、男女共同参画を推進するための報告書が発表されました。このように、国のレベルでの非常に大きな流れが出てきたわけでありますが、このたびおいでいただいています名取さんと大澤さんはその中核でいろいろと仕事をされてきたという方々でいらっしゃいます。

人間の能力として男女にまったく差がないということは言うまでもありません。過去の歴史や、特に最近の世界の情勢から見ましても、学術でも政治でも経済におきましても、あるいは、その他のいかなる分野におきましても、このことは明々白々であります。それにも関わらず、力や体力に勝っているということで、男性が自らに非常に都合のよい制度や論理を作り上げてまいりまして、女性にとって不利な社会を長年にわたり強制してきたということは、またまぎれもない事実でございます。

このような状況を根本的に変えていかなければならない、そうしなければ人権上の問題はもとよりでありますが、社会全体の活力を保持していくということも不可能であると、私は思っております。

我が国におきましても、先ほど述べましたように、国のレベルの流れの中で、遅まきながら内閣府に男女共同参画会議が置かれたということはご存じの通りでありますし、国の重要施策の一つとして取り組みが開始されたということであります。こういう会議が不要になることこそが私は望ましいと思っておりますし、そういうようになると信じているところであります。

さて、名古屋大学はこの問題に関しましては、全国の大学に先がけて取り組んでまいりました。ここ4、5年の間にも、折りにふれまして教職員の研修などで取り上げてまいりましたし、また今日の司会の伊藤副総長や、人権・男女共同参画担当の総長補佐である増田教授等を中心といたしまして、精力的に活動を行っております。

平成1 」2年9月には、「部局長会に男女共同参画に関する検討委員会を設置いたしまして、平成13年3月に「名古屋大学における男女共同参画を推進するための提言」というものを評議会で決定をいたしまして、本学の最重要施策課題と位置付けております。

本日のシンポジウムは、ただいま申し上げました提言に基づいた諸々の課題がございますけれども、これの実施、あるいは点検に関する取り組みがどのように行われているかということの中間報告を兼ねるという、そういう位置付けになっています。

2年にわたりまして、いろいろなアンケートや部局長のヒアリングを実施しました。また教職員や学生各層との意見交換も行っております。なお、名古屋大学の宣伝ばかりしているようですが、平成13年度には「男女共同参画検討委員会」を「推進委員会」に改組いたしまして、「男女共同参画に関する具体的推進方策について」と題する提案をまとめまして、本年の3月には評議会に報告をしているというところでございます。

とは言え、たとえばこういうことがあります。岡崎恒子先生は、皆さん、ご存じですね。

非常に高名な生物学者でいらっしゃいますし、本学の名誉教授でもいらっしゃいます。たまたま、本学の運営諮問会議の副会長をなさっておられるわけですが、、先般、運営諮問会議第2期の第1回が行われました。この会議には本学の部局長が50人ほど全部陪席をいたしておりますが、そこで岡崎先生が「私は紅一点ということで入れてもらっているのではないでしょうか」という、ジョークを込めて痛烈なご指摘をなさいました。おわかりでしょうか、私も含めて部局長以上、皆、男だということであります。

執行部といたしましても、各部局の取り組み状況は、データとして正確に把握しているつもりでございます。教職員の意識改革が大幅に進んだとも私は思っております。まだ1割ぐらいですが、女性教官も増えてまいりましたし、女性の事務の役職者の数も着実に増加していると考えております。こういう形で、ともかくポジティブな対応が目に見える形で現れてくるということが大切であろうと思っております。

セクハラやアカハラの対策も、この問題と深く関係していることはよく承知しておりまして、これにつきましても、どこにも負けない制度設計等を努力をしていると自負をいたしております。たとえば、全学の苦情処理制度の整備や、セクハラの相談所の開設等々も行っております。

私自身は、まず形や箱や制度などを作って、その中で意識改革をやや強制的にでも進めていくという手法をとる方なのですが、そうでないとなかなか進まないという考えを持っております。しかしながら、形の上だけではなくて、今後はこれらのことが実質を伴ったものに進化させていかなければならないと考えております。そうでないと意味がないと思っております。

たとえば、各部局の意思決定や、各部局の職員の意向の表示、そういうところにどの程度反映されているかというようなことが大切でありまして、こういう点を注意深く見守って実質を一層高める努力が必要であり、またそういうようにやっていくつもりでございます。

本日は、1部、2部、3部がどういうものが行われるかということも申し上げるつもりでしたが、先ほど伊藤さんが申されましたので、これは省略をさせていただきます。

そういうことで、本日のシンポジウムが皆さんのご努力によって、大変意義のある実り多いものにしてくださるようご協力をいただきたく、心からお願いを申し上げまして、お礼を込めましたご挨拶といたします。どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤 松尾総長、ありがとうございました。

それでは、早速でございますが、第1部を始めたいと存じます。初めに、文部科学省生涯学習政策局主任社会教育官でいらっしゃいます名取はにわ先生に、「男女共同参画社会」というタイトルでご講演をいただきます。

ここで、、若干ではございますが名取先生のご経歴についてご紹介をさせていただきます。

名取先生は、昭和48年に東京大学法学部をご卒業になられ、法務省に入省されました。法務省では人権擁護局等、それから総理府婦人問題担当室、さらに日本学術会議事務局、法務総合研修所等々をご歴任になられました。この間、埼玉大学政策科学研究科、現在の政策研究大学院に国内留学をされ、政治学の修士号を取得されております。

平成6年4月に、法務省入国管理局研修指導教官と内閣官房・内閣外政審議室、内閣審議官等々に併任され、平成7年4月、内閣総理大臣官房男女共同参画室長にご就任され、現在の男女共同参画社会基本法の制定に携わられました。その後、日本学術審議会学術部長を経まして、昨年1月、現職にご就任になっておられます。

それでは、名取先生、よろしくお願いをいたします。(拍手)