名古屋大学での女性研究者支援女性研究者をエンパワーメントし
未来の扉を開く

文部科学省「女性研究者研究活動支援事業」とは

 女性活躍推進に向け、平成18年度から女性研究者支援事業をスタートさせた文部科学省。
 図1に示すようにその背景には、日本の女性研究者の割合が欧米先進諸国に比べ極めて低く、上位職への登用もなかなか進まない状況がありました。女性研究者の登用は、男女共同参画の観点はもとより、研究活動を活性化し、組織としての創造力を発揮する上でも、重要です。
 女性研究者の裾野拡大を目指す本事業は、その能力を最大限発揮できるよう、研究と出産・子育て・介護などのライフイベントとの両立や、女性研究者の研究力向上を一体的に推進する大学等の機関を支援するものです。
 平成27年度からは、新たに「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を開始しています。

図1 各国における女性研究者の割合の比較

出典:総務省「科学技術研究調査 」( 2019年)
OECD”Main Science and TechnologyIndicators”
米国国立科学財団(National Science Foundation, NSF)”Science and Engineering Indicators 2018”

多彩なプロジェクトを稼働し、支援を強化!

これまで採択された文部科学省「女性研究者活動支援事業」

 女性研究者の育成に向け、いち早く様々なプロジェクトに取り組んできた名古屋大学。
平成19年度から現在に至るまで、「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)」を含め、7つの文部科学省「女性研究者研究活動支援事業」に採択され、精力的に活動を展開してきました。

 平成19年度採択の女性研究者支援モデル育成事業「発展型女性研究者支援名大モデル」事業では、全国の事業所に先駆け常設型の学内学童保育所を設置。育児中の短時間勤務制度など、ハード・ソフト両面でワークライフバランス(WLB)環境を充実させ、育児や家庭、研究との両立をバックアップしました。これと併せ、若手女性研究者の可能性を拓く発展型ポジティブ・アクション・プロジェクトも実施。女性教員の採用および昇進を点数化し、3年間の点数の積算がもっとも高い部局に、女性の特任教員の人件費または研究費を支援、3年後には任期のない承継教員へ移行させることで、若手女性教員の採用を加速させました。

 平成22年度採択の女性研究者養成システム改革加速「名古屋大学方式 女性研究者採用加速・育成プログラム」では、5年間で合計29名の理工農学系女性教員を採用しました。とりわけ女性上位職の採用に力を注ぎ、「女性PI枠」(理工農学系分野で研究を主導する教授・准教授の女性限定公募)を設けました。また、高等教育研究センターとの連携によりメンタープログラムを実施しました。

 名古屋市立大学・豊橋技術科学大学とともに立ち上げた「AICHI女性研究者支援コンソーシアム」は、平成26年度採択の女性研究者研究活動支援事業(連携型)です。この事業の特徴は、愛知県内の産学官による女性研究者研究活動支援事業への取り組みです。女性研究者の研究力向上及び上位職への登用を目的に、女性研究者リーダーシップ・プログラムや、トヨタ・女性研究者インターンシップ・プログラム、広域メンターシップ制度等を行いました。

 「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」(平成29~令和4年)では、女性研究者トップリーダー顕彰に取り組み、トップリーダーの「見える化」と学内の意識啓発に注力しました。また、女性研究者リーダーシップ・プログラム、研究力向上のための各種セミナー、ワークライフバランス推進支援のための取り組みを実施しています。

 「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)」(令和2~3年)では、岐阜大学・国立女性教育会館とともに、海外大学における女性研究者支援の先進事例についての実地調査やアンケート調査を実施しました。この調査結果を踏まえ、「大学における多様性を推進するための教員採用マニュアル」 及び 「大学等における無意識のバイアス研修プログラム」 を開発、公開しました。

 令和3年採択の「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)」は、女性研究者数が著しく低い工学系分野において、何が女性研究者の参入を妨げているのかを見極め、その課題(特性)を解決できる研究環境を実現していくものです。

 令和5年には「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(女性リーダー育成型)」に採択されました。研究環境整備、研究力向上とリーダー育成、上位職への登用を総合的に推進する「リテンション・ディベロップメント・プロモーション(RDP)プログラム」を展開し、特に女性上位職教員(教授・准教授)の増加を目指します。

 図表2、3で示すように、名古屋大学の女性教員比率、工学系教員ともに一定の成果をあげていますが、まだまだ途上です。さらなる女性研究者の育成を目指し、多彩なプロジェクトを行っていきます。

図2 名古屋大学の女性教員比率の推移

出典:名古屋大学プロフィール2008~2023(各年度5月1日現在)

図3 工学部・工学研究科の女性教員比率の推移

出典:名古屋大学プロフィール2008~2023(各年度5月1日現在)